給与ファクタリングに対する最高裁判決【給与ファクタリングは闇金】

給与ファクタリングに対する最高裁判決【ファクタリングは闇金】

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ファクタリングとは

ファクタリングとは、個人や会社の売掛金や給与を受け取る権利(債権)を実際の価格よりも安く買取るサービスで、2015年辺りから「資金調達プロ」というサイトが、ファクタリングという手法による資金調達のマッチングサービスを立ち上げたことからにわかに流行り出し、当時から限りなくグレーな資金調達法として金融庁が注意喚起していましたが、背に腹は代えられない消費者の利用者が増え続けて社会問題になっていました。

「給与ファクタリングは賃金債権の譲渡であって貸金業ではない」という給与ファクタリング業者の主張は、年利にすれば400%を優に超える悪質なものであり、訴訟問題になることは当初から容易に想像できました。そして「給与ファクタリング」が貸金業法における「貸付け」に当たるかどうかの紛争に、最高裁第三小法廷(宇賀克也裁判長)は「当たる」との初判断を示しました(2023年2月21日)。

尚、労働基準法24条には「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定されており、他人に譲渡できないので「給与ファクタリングは賃金債権の譲渡であって貸金業ではない」という給与ファクタリングの主張は否定されることになります。

労働基準法

(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

給与ファクタリングは質屋のイメージだった

簡単にいうと「給料を担保にお金を借りる」というイメージです。担保にすることを民法では「質権を設定する」といいます。質権とは、担保の目的物の占有を債権者に移転し、債権者は弁済があるまでこの目的物を留置し、間接的に弁済を強制するとともに、弁済がなされない場合には、この目的物につき、他の債権者に優先して弁済を受ける約定担保物件(やくじょうたんぽぶっけん)をいいます。約定担保物権は、2種類ある担保物権の1つです。

約定担保物権:当事者間の設定行為によってはじめて生じる担保物権(例:質権、抵当権)
法定担保物権:一定の立法政策に基づき、法律上当然に生じる担保物権(例:留置権、先取特権)

質権と抵当権の違い

質権は担保の目的物の占有を債権者に移転することが必要ですが、受け取る権利のある給料は、時計やバッグのように質屋に持って行くことはできません。

一方、抵当権は占有を移転しない非占有型の担保物権であり、抵当権が設定されても抵当権設定者(債務者)は抵当権が設定され担保となっている目的物を債権者に引き渡す(占有を移転する)必要がありません。抵当権の最大の特色は、この非占有型担保であるという点と、もう1点は担保権者に優先弁済権があることです。

もっとも、民法上、抵当権の目的にできるのは、不動産・地上権・永小作権とされ(民法369条)、動産には設定できないため、給与ファクタリングの担保としての抵当権というのは正確ではありません。

民法

(質権の設定)
第344条
 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。

(抵当権の内容)
第369条

① 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
② 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

最高裁の判決が確定するとどうなるか

「給与ファクタリング」が貸金業法における「貸付け」に当たるかどうかの紛争に、最高裁第三小法廷(宇賀克也裁判長)は「当たる」との初判断を示した上記判例は、今後同じような給与ファクタリングに関する訴訟が提起された場合の指針になり、判例に沿った判決がなされることになります。

最高裁の判例が出たにも関わらず、それ以降にその判例に反するような判決を出すことは法律に矛盾することになってしまうからです。因みに 最高裁判所の判決が「判例」、それ以外の高等裁判所や地方裁判所の判決が「裁判例」といいます。

売掛債権のファクタリングは合法

個人の給料を目的物にした給与ファクタリングは違法(闇金)ですが、売掛債権のファクタリングは合法です。例えば請求書(債権)を先に現金化する方法です。個人ではなく、事業性のある売掛金の場合はファクタリングの目的物とできるので、売掛債権のファクタリングは今後も伸びていくと予想できます。

まとめ

給与ファクタリングは貸付けに当たるとの最高裁の判決が出たことで、それまで営業していた給与ファクタリング業者は撤退せざるを得なくなりましたが、違法な闇金として残り続ける業者もいるかと思います。大手カードローン審査に落ちてどうしようもなくても、違法な給与ファクタリングに手を出さないようにして下さい。

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この記事を書いた人

株式会社ラパヌイ(⇒ 会社情報)代表。高校卒業後、様々なバイトをしながら人生を模索。22歳で福祉専門学校に入り保育士資格を取得後、臨床心理学を学ぶために大学に編入。卒業後に児童福祉施設に就職するが、福祉職に未来はないと感じ3年で離職。2004年に黎明期のアフィリエイトの洗礼を受け、様々なサイトを立ち上げて売り上げを伸ばし独立。2020年に宅建資格を取得後、法律の勉強が楽しくなり、伊藤塾で司法試験に向けて勉強中。2017~2019年の間で世界を4周し、5周目を計画中。

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