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ライバルの追従を許さず一時代を築いた傑作スポーツワゴン、スバル レガシィツーリングワゴン

レガシィツーリングワゴン 査定

現在でこそ3列シートミニバンやSUVによってほぼ駆逐されてしまいましたが、1990年代の日本では空前のステーションブームが起きたこともありました。その火付け役はスバル レガシィで、それまで商用の『ライトバン』のイメージがあまりに強くて成功しなかった国産ステーションワゴンに、商用モデルを持たないスポーツワゴンという要素で深く切り込み、ライバルの追従を許さない大ヒットを記録したのでした。

目次

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各代の概要と時代背景

レガシィツーリングワゴン大ヒットへ至る道

セダンのような3BOX車のルーフ(屋根)を後部まで延長、独立トランクの代わりに広々とした荷室を設けたワゴンボディ。

細かい定義はいろいろとありますが、日本ではそのワゴンボディのうち、主に2列シート4~6人乗りで乗用車登録(3 / 5ナンバー)、少なくとも乗車定員の手荷物程度は載せられる車をステーションワゴンと呼ぶことが多いです。

その歴史は戦後日本の自動車産業が復興し、乗用車が再び作られる頃から既に始まっていましたが、当初は商用車登録(1 / 4 ナンバー)のライトバンが多く、その乗用車登録版としてステーションワゴンも販売されるようになったのは1960年代に入ってから。

しかも日本で個人が自動車を所有、あるいは使用し始めた頃は、仕事用を兼ねてライトバンが多く、1960年代半ばまでは大衆車もまずはライトバンからデビューし、様子を見ながらセダンなどが追加されていったほどです。

そのような状況でしたから、「広い荷室を持つワゴンボディの車はライトバン」という認識が日本では浸透してしまい、また乗用車登録のステーションワゴンを設定しても基本的なメカニズムや見かけがライトバンと共通で、セダン並の装備や装飾を施したものがほとんど。

そのため、庶民の憧れといえば「商用車っぽくない」セダンやクーペであり、いくら便利でもステーションワゴンが人気になることはまずありませんでした。

1966年、初代トヨタ カローラや初代日産 サニーと同じ年、スバル1000で登録車市場に参入した(それまでのスバル360やサンバーは軽自動車)スバルもまた同様で、セダンのほかにライトバンを販売。

初代レオーネ(1971年発売)で、オフロード車を除く日本製乗用車としては初めて4WDを設定、それを活かしてレオーネ・エステートワゴンの名でステーションワゴン版を発売しようとしたものの、前述の市場における事情もあって、エステートバンとして発売されました。

2代目レオーネ時代の1981年、初めて乗用車登録のレオーネ・ツーリングワゴンを発売しますが、当時はスバル自体が「4WDで妙に最低地上高の高い変わった車を売っているメーカー」というキワモノ扱いで、今ひとつ主流にはなれません。

試行錯誤しながら3代目レオーネまで頑張りますが、ついには北米市場での不振も重なり、スバルの自動車事業そのものが窮地に立たされます。

その状況を打開するため、レオーネや上級クーペのアルシオーネなど、それまでの「水平対向エンジンと4WD」という基本コンセプトを除けば、全てを1から新しくした新型車、初代レガシィを1989年に発売しました。

もちろんそこにはステーションワゴンの『レガシィ・ツーリングワゴン』も設定されていましたが、当時の国産車としては極めて異例なことに、商用登録のライトバンを持たないステーションワゴン一本槍で勝負を仕掛けたのです。

そしてそれは成功し、比較的地味で人気が出るまで時間がかかったセダンとは異なって、まずレガシィはツーリングワゴンから大人気となりました。

総合概要:「ライバルの追従を全く許さなかった唯一無二の存在」

1989年、セダンとともにデビューしたレガシィツーリングワゴンは、商用ライトバンを持たないという特徴もさることながら、それを活かしたスポーツワゴンらしい走りの良さ、乗り心地の上質感などクオリティの高さが人気の秘訣です。

さらにステーションワゴンでの国際速度記録に挑んで新記録を達成するなど、スポーツセダンと変わらぬ走行性能を有するスポーツセダンとしてその存在感をアピールしたことも、華を添えました。

初代レガシィ以前からステーションワゴンは存在し、レガシィツーリングワゴンの大ヒットによってそれらは『お化粧直し』を経てステーションワゴンブームに便乗してヒット作になっていきますが、ただ便乗しただけだったとも言えます。

レガシィほど真面目にステーションワゴンに徹したライバル車はほとんど無く、ましてや5ナンバーサイズで高品質を維持した『元祖プレミアムコンパクト』とも言えたレガシィツーリングワゴンにはどのライバルも追従できなかったのです。

そしてミニバンやSUVブームが到来すると、ステーションワゴンに見切りをつけたライバルが次々に消えていった一方でレガシィツーリングワゴンだけは生き残り、いつしか唯一無二、孤高のツーリングワゴンとして君臨するようになっていました。

そのレガシィツーリングワゴンも、スバルの主要市場である北米や欧米で人気が高まると大型化が進み、かつてのコンパクトさは失われていったため、後継のレヴォーグに後を託して2014年で日本での販売を休止。

2018年現在では、引き続き日本での販売が続けられている、SUV版のレガシィ・アウトバックにその名残を残しています。

商用ライトバンを持たない乗用スポーツワゴンという驚き・初代BF系(1989-1993)

1989年2月、初代レガシィツーリングワゴンが、セダンとともに発売、9月にはEJ20ターボを搭載したトップグレード、『GT』もラインナップされました。

画期的だったのは、ツーリングワゴンの商用バージョン、発売されていれば『レガシィバン』とでも呼ばれたであろうライトバンを設定しなかったことで、レガシィに限ってはワゴンから商用イメージを全く連想させないことに成功します。

当時はセダン並の豪華装備を備えたステーションワゴンを発売しても、サスペンションなどは過積載も考慮して固めで頑丈、信頼性は高いものの、走行性能や乗り心地は二の次となるのが普通で、ステーションワゴンへの上質感などあまり求めなかった時代です。

そこに登場したレガシィツーリングワゴンは、セダンと同じ動力性能を持ち、商用を考慮せずに済むため乗り心地や走行性能に優れた純粋な『スポーツワゴン』というジャンルを確立、大成功を収めるとともに、一気にステーションワゴンの代名詞的存在となります。

これは初代レガシィが、それまで販売してきたレオーネの後継ではなく(そちらはインプレッサが担った)、1クラス上のブランニューモデルとして発売されたことも幸いしたもので、商用ユーザーには引き続きレオーネバンで対応できたので、レガシィにバンは不要でした。

クサビ型のウェッジシェイプ・ボディはまだ3代目のレオーネやアルシオーネのイメージを引きずる少々古臭いデザインでしたが、見た目の平凡さに対して車内の広さなど秀逸で、体格の問題で5ナンバーサイズの小型車を所有しにくい人でもゆったりしています。

もちろん荷室のスペースも十分で、高い走行性能と実用性の高さを両立したのですから、ヒットしないわけもありません。

見た目の平凡さや、WRC(世界ラリー選手権)でまだまだ活躍できる実力やノウハウが欠けたゆえに、マニア以外からの人気が今ひとつだったセダンとは対照的に、ツーリングワゴンは低迷するスバルを救い、現在のプレミアム4WD乗用車メーカーとしての基盤を作りました。

今で言う『プレミアムコンパクト』的なコンセプトを先取りしていたことや、バブル景気や税制改正による3ナンバー車人気もあって、1992年6月には輸出用2.2リッターエンジンを搭載した3ナンバー車『ブライトン220』も登場。

同8月にはセダンに先んじてSTIコンプリートモデルも発売され、まずレガシィはツーリングワゴンを主力としてスバルの名を大きく高めたのです。

エンジンラインナップはいずれも水平対向4気筒エンジン、1.8SOHC / 2.0SOHC / 2.0DOHC / 2.0DOHCターボ /2.2SOHCの5種類で、2リッターSOHC版の『ブライトン』にのみFF車も設定され、最廉価版『Mi』のMT車は歴代唯一のパートタイム4WD車でした。

(代表スペックと中古車相場)
スバル BF5 レガシィ ツーリングワゴンGT 1989年式
全長×全幅×全高(mm):4,600×1,690×1,500
ホイールベース(mm):2,580
車重(kg):1,400
エンジン:EJ20 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:1,994cc
最高出力:200馬力 / 6,000rpm
最大トルク:26.5kgm / 3,600rpm
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:5MT
燃費(km/L):9.2(10.15モード燃費)
サスペンション形式:(F・R)ストラット
中古車相場(各型全て):45万円

ライバルには真似のできない上質感、2代目BG系(1993-1998)

2代目は1993年10月にモデルチェンジされて発売、先代と異なり社内デザインではなく、オリビエ・ブーレイのデザインした滑らかでボリューム感を持たせた曲線を持ち、初代より大きく高品質に見えるボディとなりました。

実際には5ナンバーサイズは守られ、ホイールベースが50mm延長されたのに伴い全長も60mm延長されていますが、それによって居住性や快適性、特に後席が大きく改善されています。

この頃からトヨタ カルディナや日産 アベニールなどライバル車が登場しますが、いずれもカルディナバン、アベニールカーゴと同型の商用ライトバンを持っていたためブランドイメージはレガシィツーリングワゴンに遠く及ばず。

もちろん内装や走行性能、乗り心地の面なども商用車と共用したサスペンションを使ったライバルではレガシィに全く追従できず、かえってレガシィツーリングワゴンの評価を高める結果に終わりました。

さらにレガシィツーリングワゴンの評価を高めたのが、1996年6月のマイナーチェンジでは、それまで後付けのスポーツサスペンション用と思われてきたビルシュタイン製のダンパー(ショックアブソーバー)をGT-Bに採用。

そのヨーロッパ仕込みの上質な乗り心地は元より、テールゲートで誇らしげにきらめくビルシュタインのエンブレムはユーザーの満足度を大きく高めたのでした。

また、このマイナーチェンジではGT-Bの最高出力が280馬力に到達し、2リッターエンジン車としては初めて280馬力自主規制値(当時)に達しています。

エンジンラインナップはいずれも水平対向4気筒エンジン、1.8SOHC / 2.0SOHC / 2.0DOHC / 2.0DOHCターボ /2.2SOHC / 2.5DOHCの6種類で、この2代目までは1.8リッターSOHC車と2リッターSOHC車にFF車も設定されていました。

(代表スペックと中古車相場)
スバル BG5 レガシィ ツーリングワゴンGT 1993年式
全長×全幅×全高(mm):4,670×1,695×1,490
ホイールベース(mm):2,630
車重(kg):1,390
エンジン:EJ20 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:1,994cc
最高出力:250馬力 / 6,500rpm
最大トルク:31.5kgm / 5,000rpm
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:5MT
燃費(km/L):10.4(10.15モード燃費)
サスペンション形式:(F・R)ストラット
中古車相場(各型全て):7~58万円(グランドワゴン / ランカスター含まず)

5ナンバーサイズステーションワゴンの最高到達点、3代目BH系(1998-2003)

1998年6月にモデルチェンジされた3代目は、引き続き5ナンバーサイズを維持してデザインもキープコンセプトながら、マッキントッシュ製オーディオの採用など内装の質感を大幅に高め、『プレミアムコンパクト』時代のレガシィ最後にして最高傑作となりました。

先代まで地味だった2代目がレガシィB4の名でスポーツセダンとして独立したかのようにアピールされ、ツーリングワゴンと共に2トップとして双方とも人気を獲得。

基本的に先代とデザインは酷似していますが、ヘッドライトが上下2灯式となって大型化されて台形グロントグリルも拡大され、フロントマスクが重厚化するとともに、上級グレードではHIDを採用してさらに品質を高めています。

2001年1月にポルシェデザイン社が監修した特別な外装や専用ボディカラーを設定し、装備も充実させた特別仕様車『BLITZEN(ブリッツェン)』を発売、特に塗膜が一層多いためツヤや仕上げが一味違う専用色『プレミアムレッド』が息を呑む美しさでした。

このブリッツェンは3代目レガシィでB4、ツーリングワゴンともに何度も発売され、3代目レガシィの定番人気グレードとなっています。

また、2002年1月にはそれまでSUV風モデルのランカスターにしか搭載されていなかった水平対向6気筒エンジン、EZ30を搭載した『GT30』グレードも追加。

これによりエンジンラインナップは水平対向4気筒エンジンが2.0SOHC / 2.0DOHC / 2.0DOHCターボ / 2.5DOHC、水平対向6気筒エンジンが3.0DOHCの合計5種類で、この代から全車フルタイム4WD化されています。

(代表スペックと中古車相場)
スバル BH5 レガシィ ツーリングワゴンGT-B 1998年式
全長×全幅×全高(mm):4,680×1,695×1,485
ホイールベース(mm):2,650
車重(kg):1,480
エンジン:EJ20 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:1,994cc
最高出力:280馬力 / 6,500rpm
最大トルク:35.0kgm / 5,000rpm
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:5MT
燃費(km/L):10.8(10.15モード燃費)
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)マルチリンク
中古車相場(各型全て):1~95万円(ランカスター含まず)

海外市場重視の始まり、3ナンバー化した4代目BP系(2003-2009)

4代目は2003年5月にモデルチェンジされて登場、欧州や北米での人気が高まったことにより、それら主要市場を重視するとともに、年々厳しくなる衝突安全基準にも対応して、ついにボディは全幅1,730mmに達して3ナンバー化されました。

単純に3ナンバー化されただけでは自動車税が上がるわけではなく、昔よりデメリットは少ないとはいえ、それまで『5ナンバーサイズに収まるプレミアムコンパクト』という売りのあったレガシィツーリングワゴンにとっては、思い切って一線を超えた形となります。

もちろん、ただ大きくなっただけでは平凡な大型化になってしまいますが、素材や構造の見直しによって先代より軽量化に成功、内外装の質感を高めるとともにデザインにもややゆとりができて、全幅を許容できる環境ならばむしろ好ましい改良になりました。

特にスポーツセダンとして重要な2リッターターボモデルは、2代目 / 3代目で採用されたシーケンシャルツインターボからツインスクロール式シングルターボへ変更、最大トルク発生回転数が大きく下がり、実用的にも走行性能でも好ましい変更となっています。

先代で好評だった特別仕様車『ブリッツェン』は発売されませんでしたが、STIコンプリートモデルや安全運転支援システム『アイサイト』の初設定など、4代目も話題の多いモデルでした。

エンジンラインナップは水平対向4気筒エンジンが2.0SOHC / 2.0DOHC / 2.0DOHCターボ / 2.5SOHC / 2.5DOHCターボ(S402)、水平対向6気筒エンジンが3.0DOHCの合計6種類で、全車フルタイム4WD。

(代表スペックと中古車相場)
スバル BP5 レガシィ ツーリングワゴンGTスペックB 2003年式
全長×全幅×全高(mm):4,680×1,730×1,475
ホイールベース(mm):2,670
車重(kg):1,450
エンジン:EJ20 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:1,994cc
最高出力:280馬力 / 6,400rpm
最大トルク:35.0kgm / 2,400rpm
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:5MT
燃費(km/L):12.0(10.15モード燃費)
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)マルチリンク
中古車相場(各型全て):1.5~228万円(アウトバック含まず)

北米市場重視してさらに大型化、日本市場では最後の5代目BR系(2009-2014)

2009年5月にモデルチェンジされた5代目では、一層人気が過熱した北米市場からの要望に応える形で、全長、全幅、全高全てが拡大されて5ナンバーサイズを大きく超え、特にツーリングワゴンの全高は1,535mmと機械式立体駐車場の制限ギリギリまで拡大されました。

これによって車内空間は先代までよりかなりゆとりが出たほか、電動パーキングブレーキの採用でパーキングブレーキレバーが無くなったことにより、センターコンソール上の突起も減ってさらに余裕が出ています。

また、レオーネ以来先代までの伝統だったサッシュレス(窓枠無し)ドアから通常の窓枠付きのドアになり、ドア自体の剛性アップと開口部拡大による乗降性向上、大型セダンらしい品質感の向上につながりました。

さすがにこれだけ大きくなると重量増加も避けられず、2リッターNAエンジンは廃止されてエンジンラインナップは水平対向4気筒エンジンのみ、最終的には2.0DOHCターボ / 2.5DOHCの2種類へと整理されています。

内外装のデザインや品質もそのサイズに見合ったものになりましたが、さすがに日本市場では元々のキャラクターを考えれば大型化も限界と考えられたのか、ツーリングワゴンはこの代で日本での販売終了、後継は1サイズ小さいレヴォーグとなりました(2014年)。

6代目レガシィは2014年10月に発売されていますが、日本でのツーリングワゴンは無くセダンのB4とSUV風ワゴンのアウトバックのみです。

(代表スペックと中古車相場)
スバル BR9 レガシィ ツーリングワゴン2.5GT Sパッケージ 2009年式
全長×全幅×全高(mm):4,775×1,780×1,535
ホイールベース(mm):2,750
車重(kg):1,520
エンジン:EJ25 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:2,457cc
最高出力:285馬力 / 6,000rpm
最大トルク:35.7kgm / 2,000~5,600rpm
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:6MT
燃費(km/L):11.6(10.15モード燃費)
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)ダブルウィッシュボーン
中古車相場(各型全て):29.8~288.8万円(アウトバック含まず)

各代の新装備

エンジンから何から全てが新しかった初代

初代レガシィツーリングワゴンは、それ以前から販売していたレオーネや、それをベースとした上級クーペのアルシオーネと比較しても、「水平対向エンジンを搭載したFFおよび4WD」という以上の共通点はほとんど無いほどの新規開発車です。

レオーネでスペースの都合上、SOHC化やターボ化ですら苦労したEA型エンジンと決別して新型のSOHC / DOHCエンジンでインタークーラーターボとも組み合わせ可能なEJ型エンジンを搭載し、2リッターDOHCターボのEJ20ターボでは200馬力を発揮します。

プラットフォームも新型でサスペンションは4WD特有のプッシングアンダーが出にくく、ブレーキング時のノーズダイブも抑える絶妙なセッティングの施された、4輪ストラット独立懸架を採用。

レオーネでは末期にようやくフルタイム4WDが採用されましたが、初代レガシィは1.8リッターの最廉価グレード『Mi』にパートタイム4WDを残した以外、全てフルタイム4WDとなっています。

それもAT車ではトランスファーに油圧クラッチを用いて自動的に前後トルク配分を変化させる、アクティブトルクスプリット4WDを採用、MT車は通常のトランスファーを使ったフルタイム4WDですが、『GT』グレードではリアにビスカスLSDを装備しました。

ツインターボ化とビルシュタインダンパー採用の2代目

2代目ではEJ20ターボエンジンが、先代のシングルターボからシーケンシャルツインターボとなり、STiモデルを除くツーリングワゴンGTが先代では200馬力に留まっていたところ250馬力へ、1996年6月のマイナーチェンジでさらに280馬力となりました。

ただし、このシーケンシャルツインターボはセカンダリータービンへの切り替え時に『トルクの谷間』ができることで知られており、3代目まで採用されましたがその違和感は指摘され続け、出力には余裕があるもののあまりスポーティとは言えません。

なお、2リッターターボの『GT-B』グレードでAT車には、アルシオーネSVXで採用された路面状況により電子制御で35:65から50:50まで前後駆動配分を変化させる『VTD-4WD』を使いました。

さらにこの代まで存在したFF車には、『TCS(トラクションコントロール)』も設定され、4WD車に及ばないまでも走破性や安定性を高める努力がなされています。

そして2代目レガシィツーリングワゴンで最大のトピックが『ビルシュタインダンパー』の採用です。

チューニングパーツとしては既に著名でしたが、ビルシュタイン製倒立ダンパーを純正採用するのは日本車初で、ヨーロッパ仕込みの乗り味はそのブランド力も相まって大好評となり、以後日本車への採用が拡大していくことになります。

レガシィツーリングワゴンにとっても、ビルシュタインダンパーは「ライトバンと共用の他社ステーションワゴンとは一味も二味も違うスポーツワゴン」としてのブランド力を高める、最高のアイテムでした。

3リッターフラット6やポルシェデザイン監修のブリッツェンが衝撃だった3代目

3代目では上級グレードにHIDヘッドライトが採用されるなど装備の充実が図られ、高級オーディオとして有名なマッキントッシュ製カーオーディオがメーカーオプション設定されたのは世間を驚かせました。

車体は5ナンバーサイズに収まっていたとはいえ高級化が進み、1996年に生産終了したアルシオーネSVX以来となるボクサー6(水平対向6気筒エンジン)、3リッターDOHCの『EZ30』を搭載した『GT30』グレードが2002年8月に発売されています。

また、3代目特有の特別仕様車で、1999年12月に第1弾が発売されて以来何度もデザインを変えて発売され、2001年1月発売の第2弾からツーリングワゴンにも設定されるようになった『BLITZEN(ブリッツェン)』も特徴的。

ブリッツェンはポルシェデザイン(自動車メーカーのポルシェAGとは同族の別会社)による専用エアロを装着したほか、専用色のプレミアムレッドでは特別に一層増やした塗膜によって、遠くからでも通常の塗装と全く異なるのがわかるほどでした。

単に塗装が分厚いだけでなく、塗膜を増やすことによって表面仕上げがよりなめらかになり、光沢も違うことがこのブリッツェンでよく知られるようになり、メーカーや車種による塗装の差異が注目されるキッカケになったとも言えます。

ツインスクロールターボ化で低回転トルクを増大、アイサイトも初採用の4代目

全幅を増して衝突安全性を向上させつつ、アルミ製パーツや高張力鋼の採用で軽量化した4代目では、ターボの変更で走行性能にも大きな影響が出ました。

具体的には、2~3代目で採用され、パワフルなもののセカンダリータービンへの移行時にトルクの段付きが指摘されていたシーケンシャルツインターボがシングルターボに変更。

その上でエキゾーストマニホールドからタービンへの排気流入経路を2つに分けたツインスクロールタービンを採用し、低回転からのレスポンスとトルクを向上、最大トルク発生回転数が5,000回転から2,400回転へと一気に下がりました。

さらに全車で電子制御スロットルや等長エキマニを採用して効率アップを果たし、ターボ車以外も含め燃費性能は大きく向上。

等長エキマニの採用でそれまでボクサーエンジン特有だった『ドロドロ』という排気音が無くなって、それを嫌うユーザーからは歓迎されましたが、一方でそのボクサーサウンドを好む層向けには社外の不等長エキマニもリリースされるようになりました。

エキマニの等長化だけでなくインテークマニホールドも樹脂化によって軽量化および造形の自由度が高まっており、どうしても配管が複雑な形状になりがちなボクサーエンジンにとってはエンジンルームのスペース効率を上げるのに非常に有効な技術といえます。

なお、2003年9月に3リッターモデルへ安全運転支援用ステレオカメラを備えた『ADA』搭載モデルが設定されましたが、このADAをベースに衝突被害軽減ブレーキなどをパッケージ化した安全運転支援システム『アイサイト』が2008年5月に初設定されました。

また、スポーツモードから燃費重視モードまで、エンジン特性をドライバーが任意に変化させて燃費向上やエンジン特性の変化を楽しめる『SI-DRIVE』が、2006年5月に初搭載されています。

大型大排気量化、CVTも採用された5代目

5代目では大型化により2リッターNAエンジンが廃止され、2リッターターボも当初設定は無かったものの、2012年5月にFA20ターボを搭載した『2.0GT DIT』グレードが設定されました。

2.5リッターエンジンも2013年5月の一部改良でEJ25ターボが廃止されたことでEJ系エンジンはレガシィから消滅、2.5リッターDOHC NAのFB25のみが残り、アウトバックに搭載された3.6リッターボクサー6、EZ36は搭載されていません。

ミッションも6速MTや5速ATを組み合わせていたEJ25ターボの廃止でMTや通常のATも消滅し、最終的には全車がCVT化。

その他、5代目では電動パーキングブレーキが全車に初採用されています。

派生型

ツーリングワゴンSTI(初代)

レガシィ初のSTIコンプリートモデルはセダンでは無く初代のツーリングワゴンで、1992年8月にツーリングワゴンSTiが200台限定で発売されました。

ベースのツーリングワゴンGTはセダンのRSに劣る200馬力止まりでしたが、専用ECUとブーストアップでRSと同じ220馬力を発揮、ただし組み合わせられるミッションは4速ATのみだったので、ATコントローラーも専用になっています。

グランドワゴン / ランカスター / アウトバック(2代目以降)

レガシィやインプレッサの登場により、レオーネまでのスバル車にあった野暮ったさの消えたスバル車でしたが、その一方で良く言えば野性味という部分が無くなり、いささかスマートに過ぎるという面もありました。

そのため、大径タイヤやサスペンション変更で最低地上高を上げ、フェンダーなどボディ下半分へ樹脂パーツの多様やツートンカラー化でSUV風に仕上げたのがアウトバックです。

北米市場向けに2代目ベースで1994年から発売、日本でも要望が多かったので1995年8月から『レガシィ・グランドワゴン』名で発売、1997年8月に『レガシィ・ランカスター』と改名しました。
3代目ベースで引き続き販売された後、4代目ベース以降からは『レガシィ・アウトバック』へと再改名し、日本でツーリングワゴンの販売が休止された現在の6代目ベースでも販売されています。

なお、4代目ベースまでは4ドアセダンベースのアウトバックも存在しますが、日本では一貫してツーリングワゴンベースのみです。

S402ワゴン(4代目)

3代目に設定されたSTIコンプリートカー、S401はセダンのB4ベースのみでしたが、4代目に設定されたS402ではツーリングワゴンもベース車となり、B4に準じたSTIチューンを受けました。

日本仕様には本来設定の無い2.5リッターDOHCターボをチューニングした上で搭載し、サスペンションやボディ補強パーツ類も専用品です。

タイヤも235/40R18というベース車より大幅に太いタイヤがBBSホイールとともに履かせられ、それを収めるために専用ブリスターフェンダーで全幅も片側20mmずつ拡幅されています。

エクシーガ / クロスオーバー7(4代目)

4代目レガシィと同じSIプラットフォームで開発、CVTやFB25エンジンなど、後に5代目レガシィに準じたメカニズムが組み込まれた3列シート7人乗りミニバンがエクシーガです。

ミニバンと言っても全高は低めのロールーフタイプで、スポーティではあるもののスペース効率で劣ることから、2008年6月の発売直後こそ話題を呼んだものの販売台数は低迷。

2015年4月にはアウトバックのようにSUV化されて『クロスオーバー7』へ改名するも、その頃には存在感が薄れてしまい、2018年3月でひっそりと生産終了しました。

2017年後半から3列シートSUVの販売が盛り上がる兆候を見せていただけに、登場が早すぎたのかもしれません。

速度記録に挑んだ、レガシィツーリングワゴン

メジャーなモータースポーツには縁の無いレガシィツーリングワゴンですが、その代わりにスポーツワゴンとしての高性能を証明すべく、何度か速度記録に挑戦しました。

初代でその役目はセダンが担当でしたが、ワゴンが主力モデルと認識されたことから、2代目ではデビュー前にツーリングワゴンGTによる速度記録に挑戦、1993年9月9日に米ユタ州のボンネビルスピードウェイで平均速度249.981km/hを記録、世界最速ワゴンとなります。

1998年4月23日には3代目が米コロラド州で公道最速記録に挑み、1km区間平均速度270.532km/hを記録、『ステーションワゴン多量生産車無改造部門』で世界最速へ。

大型化とラグジュアリー化の進んだ4代目以降はこのような派手なパフォーマンスは行わなくなりましたが、3代目までのレガシィツーリングワゴンが小型コンパクトながら高性能なスポーツワゴンだったことの証明になっています。

後継車と中古車相場の推移

レガシィは2018年5月現在も6代目が販売されていますが、日本ではセダンとアウトバックのみのラインナップであり、海外では引き続き販売されているツーリングワゴンの姿はありません。

スバルはかなり以前から北米市場からの需要に大きく依存しており、その要請で5代目では大幅にサイズアップ、現地では好評なものの、日本ではいささか大きい車になってしまいました。

6代目はさらに大型化することから、主力モデルのツーリングワゴンはレガシィと別モデルが準備され、インプレッサをベースにしたスポーツセダンのWRX、そのスポーツワゴン版としてレヴォーグが開発され、2014年に発売されます。

このレヴォーグが事実上のレガシィツーリングワゴン後継車となり、日本以外にやや小さめのワゴンを求める市場でも販売されるようになったことから、北米以外ではやはりあまり大きすぎない車が良いのかもしれません。

今後、レガシィが何らかの理由でダウンサイジングされれば再び『レガシィツーリングワゴン』として日本でも復活する可能性はゼロではありませんが、レガシィとインプレッサの中間モデルとしてWRX / レヴォーグが定着している現在、その気配は無さそうです。

現在、中古市場で取引されているレガシィツーリングワゴンは4代目以降が多く、5代目は新しい割に4代目と同程度の台数しか流通していないので、新しくて程度良好、選択肢の豊富で日本国内でも使いやすい、という意味では4代目がオススメとなります。

5ナンバーサイズにこだわるなら3代目以前ですが、初代はほぼ皆無、2代目も選択肢がかなり少ないので、3代目がもっともオススメですが、やはりというべきか、ブリッツェンはあまり出回っていないのが残念です。

ただし、ブリッツェンの価値は今ではあまり認識されていないのか、出回っている個体は希少価値の割に安く、塗装が特別なプレミアムレッドのブリッツェンなど、もし程度の良いものがあれば積極的に検討して良いと思います。

4代目以降であれば、走行性能も大事とはいえ、安全装備の充実が図られた時期でもありますし、可能であれば初期バージョンでも良いのでアイサイト搭載車を選びたいところです。

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