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2代続いた究極のシティオフローダーから、3列仕様もある都会派SUVへの転身!日産 エクストレイル

エクストレイル 査定

最近になって、クロスオーバーSUVにも新たな付加価値、そして走りの良いミニバン後継として3列シートSUVの登場が脚光を浴びていますが、以前から3列シートをラインナップしていたのが日産 エクストレイル(3代目以降)です。初代と2代目はシティオフローダー的になっていた都会派SUVにアウトドアギアとしての魅力も再認識させた、画期的なモデルでもありました。

目次

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各代の概要と時代背景

総合概要:クロスオーバーSUV後発組の日産が放った、アウトドア嗜好SUV

1990年代前半までRV(レクリエーショナル・ビークル)の一種としてブームになっていた、本格的な悪路走破性能を持つクロカン4WDはその性能のほとんどがユーザーにとっては不要、単なるファッションについてきた付属品であり、価格を押し上げる要素でした。

いわばオーバースペックで高価な上に乗り心地も良くなかったため、外観以外で選ぶ要素はほとんど無いユーザーも多かったのですが、選択肢の乏しい当時では致し方ない話。

しかし、一般的な大衆車をベースにクロカンRV風のルックスと大径タイヤ、余裕のある最低地上高を与えれば、悪路走破性などソコソコでも大半のユーザーはそれで満足してしまうことが、やがて証明されます。

1990年代中盤から続々登場したトヨタ RAV4、同ハリアー、ホンダ CR-Vの初代モデルで、クロカンRVのネガティブ面を取り去って大衆車と同じ違和感無い乗り心地と入れ替え、それでいて格好は人気のオフローダーでしたから、たちまち大ヒットとなりました。

これがクロスオーバーSUV(スペース・ユーティリティ・ビークル)です。

そこでトヨタとホンダが一気に市場で躍進していくのですが、その一方でSUVに乗り遅れていたのが日産でした。

1990年代中盤以降のモデルチェンジや新型車のほとんどが市場のニーズに合わず販売台数が急激に失速、日産自体の存続すら危ぶまれる状況で、サニーをベースにしたクロスオーバーSUV風ステーションワゴン、ラシーンを発売するのが精一杯。

それでもラシーン、特にクロカンルックのラシーンフォルザがヒット作となったことに自信を深めた日産は、いよいよ本格的にプリメーラなどと同じプラットフォームを使うSUVを開発、2000年に発売したのがエクストレイルでした。

ラシーンフォルザが好評だったことから、市場では意外にもオフローダー的なデザイン、アウトドアへの需要も高いことを察した日産は、他社の都会派SUVとは一線を画したコンセプトで成功していきます。

SUVでありながらオフローダー的性格を強調した初代T30型(2000-2007)

2000年10月に発売された初代T30型エクストレイルは、当時のSUVがスポーティな都会派SUV、すなわち最低地上高が高いスタイリッシュなステーションワゴン、あるいはシューティングブレーク化し始めていた中で、ある意味特別な存在感を放っていました。

初期のSUVが「シティオフローダー」などと呼ばれ、悪路を走るでも無いのに見た目だけはオフローダーとして一部でデザインが酷評、乗用車的な外観に変わりつつあったものの、むしろシティオフローダーを望むユーザーが多いことに、日産は気づいていたのです。

そこで、FF(前輪駆動)乗用車ベースのSUVという点ではライバルと変わらないものの、角ばったSUVらしい外観や、アウトドアユースで有利な防水内装、悪路走破性をある程度考慮したオールモード4×4といった装備で積極的なシティオフローダー化を図りました。

その一方で、1980年代RVブームの際に、衝突時に相手の車や歩行者への被害が甚大になりがちな大型バンパーガードなどは設けなかった点もシティオフローダーとして徹底した面です。

これが日常の乗り心地やスタイルだけでなく、アウトドアシーンでも徹底活用したいユーザーには熱烈な歓迎を受け、日産初の本格的クロスオーバーSUVが大ヒットとなる原動力になりました。

当初エンジンは2リッターNA(自然吸気)のQR20DEのみで、装備面で若干の違いがある程度のスッキリしたラインナップでしたが、2001年2月にパワフルな2リッターターボのSR20VET搭載の”GT”グレードを追加、力強い走りで人気を加速させます。

道なき雪原を豪快に走り、スノーボーダーたちがボードなどを濡れたままラゲッジに押し込むなど、アウトドアでの実用性を持ったオフローダーであることを強調したCMも、そのキャラクターを強烈に印象づけました。

(ただしCMのように悪路でのジャンプを伴うような走行は考慮されていないため、あくまでシティオフローダーとしての走行性能に留まることには留意)

(代表スペックと中古車相場)
日産 NT30 エクストレイル X 2000年式
全長×全幅×全高(mm):4,445×1,765×1,675
ホイールベース(mm):2,625
車重(kg):1,400
エンジン:QR20DE 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1,998cc
最高出力:150馬力 / 6,000rpm
最大トルク:20.4kgm / 4,000rpm
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:4AT
燃費(km/L):12.0(※10.15モード燃費)
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)パラレルリンクストラット
中古車相場(各型全て):7.9万円~146万円(各型含む)

正常進化!クリーンディーゼルも話題の2代目T31型(2007-2015)

プラットフォームをセレナなどと同じものに更新したものの、デザイン上はヘッドライトやフロントグリルの大型化など細部に留まる超キープコンセプトなところが、初代の人気を伺わせる2代目T31型、2007年8月発売です。

2リッターターボSR20VETが廃止される一方で2.5リッターのQR25DE、ルノーと共同開発したクリーンディーゼルM9Rの搭載などで、より動力性能に余裕を持たせただけでなく、ディーゼル搭載でオフローダーらしさをさらに強調してみせました。

歴代唯一の6速MT車も2.5リッターガソリン車およびディーゼル車に設定されましたが、ディーゼル(20GT)の初期は逆にATとのマッチングがなかなかとれず、2010年7月のマイナーチェンジまでディーゼル+6ATの組み合わせが無いのに注意が必要です。

また、同じマイナーチェンジでは現在に至るまで日産のデザイアイデンティティとなっているVモーショングリルを初採用。

なお、ポップアップステアリングや防水シートなど車内のアウトドア・ギア対応装備は踏襲されましたが、センターメーターは一般的な運転席前へ移設、ステアリングからテレスコピック(前後調節)機能廃止、4WDシステムの変更が為されています。

ただし、テレスコピック機能廃止は使い勝手にかなり影響を与えたようで、2009年12月の一部改良でポップアップステアリングを廃止する代わり、チルト(上下)/テレスコピック調整機能を持った欧州仕様ステアリングに変更されました。

(ただし、2代目T31型でのポップアップステアリングは、もともと”20X”または“25X”グレードのCVT車のみ)

なお、初代の2001年から2代目の2010年まで、10年連続で”日本国内のクロスオーバーSUV販売台数第1位”を保持していたこともあります。

(代表スペックと中古車相場)
日産 DNT31 エクストレイル 20GT 2010年式
全長×全幅×全高(mm):4,635×1,790×1,700
ホイールベース(mm):2,630
車重(kg):1,690
エンジン:M9R 水冷直列4気筒DOHC16バルブディーゼル ICターボ
排気量:1,995cc
最高出力:173馬力 / 3,750rpm
最大トルク:36.7kgm / 2,000rpm
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:6AT
燃費(km/L):13.8(※JC08モード燃費)
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)マルチリンク
中古車相場(各型全て):34.8万円~249万円(各型含む)

3列シート仕様やハイブリッド追加!スタイルも一新した3代目T32(2013-)

2013年12月に発売された3代目T32型は、ルノーとの共同開発でデザインやコンセプトが一新され、2代目までと比較した場合、防水内装などアウトドア・ギアとしての要素は堅持されたものの、少なくとも内外装デザインにおいて共通点は無くなりました。

日本ではデュアリス(欧州名キャシュカイ)、北米でもローグと統合され、それぞれが持っていた都会派SUVとしての要素を受け継いだため、2代目までの「タフなイメージのシティオフローダーデザイン」から大転換。

さらに、欧州仕様キャシュカイの3列シート仕様(キャシュカイ+2)とも統合されたことで、歴代初の3列シート車が設定されるとともに、車体が一回り大型化されました。

さらにクリーンディーゼル車は日本では設定されず、2015年4月には継続生産されていたT31型ディーゼル車に代わってハイブリッド車を設定(ただし2列シート仕様のみ)するなど、日本では都会派寄りの大型SUVとなっているのが大きな特徴です。

衝突被害軽減ブレーキなどの安全運転支援パッケージ”エマージェンシーブレーキパッケージ”や、駐車支援システム”インテリジェント・パーキングアシスト”もメーカーオプションで設定され、一部改良などで順次性能を向上させています。

また、車のハード面でキャラクターが大きく変わった一方、従来からのユーザーへアピールするため、プロスノーボーダーが商品企画に参加したコラボレーション特別仕様車、”20X ブラック エクストリーマーX”なども登場しました。

これまでのユーザー層をつなぎ止めるため、日本での公式HPも極力アウトドアやウィンタースポーツを意識した構成となっている一方、高級感ある特別仕様車”モード・プレミア”も設定し、新たなユーザー開拓も狙っています。

(代表スペックと中古車相場)
日産 NT32 エクストレイル 20X 2013年式
全長×全幅×全高(mm):4,640×1,820×1,715
ホイールベース(mm):2,705
車重(kg):1,570
エンジン:MR20DD 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1,997cc
最高出力:147馬力 / 6,000rpm
最大トルク:21.1kgm / 4,400rpm
乗車定員:7人
駆動方式:4WD
ミッション:CVT
燃費(km/L):15.6(※JC08モード燃費)
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)マルチリンク
中古車相場(各型全て):128万円~339.9万円

各代の新装備

形だけでない走りを支えたオールモード4×4などを装備した初代

初代では「ステージを問わない活発な走りをするオフローダー」としてのキャラクターが大ヒットの秘訣となりましたが、もちろん実態はシティオフローダーなので、本格クロカン4WDのように強固なラダーフレームや本格4WDシステムは持ちません。

しかし、スカイラインGT-Rなどに採用されていたアテーサET-Sを元にした電子制御4WDシステム、オールモード4×4によって、日常的な舗装路で効率的なFF走行から、50:50の前後直結4WD走行までをカバーしています。

その選択は電子制御による無段階制御から手動制御まで可能で、電子制御時には舗装路のウェット路面や凍結路面での安定性にも寄与するほか、ABSやVDC(姿勢制御)と協調して動作する、安全運転支援装置の一種としての役割もあるのです。

また、ラゲッジやシートなど内装に防水、あるいは撥水加工を施したのも当時としては斬新で、ウィンタースポーツやアウトドアを楽しんだ後に、濡れたままで乗車しても何ら問題無いアバウトな使い方に対応したことで、アウトドア・ギアとしての魅力をアップ。

さらに、着膨れしていることも多いアウトドアやウィンタースポーツ時の乗降時に配慮した、上方へ跳ね上げる「ポップアップステアリング」は、カユイところに手が届く新装備として歓迎されます。

途中で追加された2リッターDOHCターボエンジンSR20VETは、シルビアなどに搭載されたSR20系スポーツエンジンの最終発展形で、シリーズ唯一、そして日産の2リッターターボエンジンとして唯一の、280馬力自主規制値(当時)に到達していました。

エンジンや4WDシステムに大きな変更のあった2代目

エンジンラインナップから排ガス規制の関係で2リッターターボが廃止、代わって2.5リッターDOHC搭載グレードが設定されるなどエンジンラインナップに変化のあった2代目ですが、ターボ車に代わり”GT”を名乗ったのは、ディーゼル車でした。

2008年9月に追加された”20GT”に搭載された、コモンレール直噴式ディーゼルターボM9Rは日本では2代目T31型エクストレイルが初搭載で、わずか2,000回転で3.7リッターV6ガソリンエンジンと同クラスの最大トルク36.7kgmを発揮。

しかもポスト新長期規制に世界初対応しており、当時の日本でハイブリッド車以外で唯一、100%減税措置を受けられたほか、最大21万円ものクリーンディーゼル自動車導入費補助金をも得られたので、性能と減税、補助金で価格差(25Xの約50万円高)をクリアできました。

4WDシステムは各操作や走行状況との協調制御に見直しが行われたオールモード4×4-iに進化。
路面状況の悪い下り坂で一定の速度で降りられる”ヒルディセントコントロール”(ガソリンエンジンのMT車除く)や、登り坂で車両の不意の後退を防ぐ”ヒルスタートアシスト”を装備しました。

特に前者は2010年7月のマイナーチェンジで走行速度の設定が可能な”アドバンスドヒルディセントコントロール”に進化し、アウトドアやウィンタースポーツ用途で使用時には強い味方となっています。

その他、一部ボディカラーで軽傷なら自動修復する新塗装”スクラッチシールド”や、オートクルーズ”ASCD”を初採用。

なお、クリーンディーゼル車は3代目登場後も2015年2月まで継続生産されましたが、3代目の日本仕様車には設定されなかったため、中古市場では今でも人気です。

ハイブリッドと最新の安全運転支援装備を追加した3代目

アウトドア・ギアとして大人気だったシティフローダーからキャラクターが大きく転換した影響は新装備にも及び、主に快適性や使い勝手に配慮しつつ、安全運転にも配慮した装備が増えました。

細かい部分では手をかざすとセンサーで感知して自動で開く電動式リアテールゲート”リモコンオートバックドア”が初採用されましたが、従来ならミニバンでの便利装備と言えたもので、3列シートの設定から新世代のSUV風ミニバン的な役割が感じられます。

また、安全運転支援装備の”エマージェンシーブレーキパッケージ”は、衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報、進入禁止標識検知、踏み間違い防止アシスト、後側方車両検知警報、ふたつき警報と盛りだくさんではあります。

ただし、モデルチェンジ初期からカメラセンサーの性能や処理能力不足で十分に機能していないことが指摘されており、2017年6月にセレナで先行採用されていた”プロパイロット”の導入で、ようやく信頼性を向上させました。

また、同じマイナーチェンジでは駐車支援機能を移動物検知機能つきの”インテリジェント アラウンドビューモニター”に強化するなど、安全運転支援は一新。

ハイブリッドシステムは日産独自の”インテリジェント デュアル クラッチ コントロール”で、駆動 / 発電兼用モーターに2つのクラッチを持ち、低速時は駆動用モーターとして、それ以外はエンジンの余力で発電・充電する1モーター2クラッチ式です。

エンジンとモーター両方が駆動するアシスト機能は持たず、どちらかでしか走行できない簡易的なハイブリッドシステムですが、それゆえ駆動系にはガソリンエンジンのものがそのまま使え、FF車だけでなく4WD車も設定されています。

モータースポーツでの活躍

その姿に恥じないラリーレイドでの活躍を示した初代

乗用車ベースで本格的4WDでなくとも、オフローダーとして高い性能を発揮することが可能なことは、クロスオーバーSUVブームの始祖、初代トヨタ RAV4(1994年)のモータースポーツ活動で証明されていました。

シティオフローダーでありながら本格オフローダーとしてのキャラクターをアピールする初代エクストレイルにとっても、長距離の悪路を走る過酷なモータースポーツ、ラリーレイドは格好のアピールの場で、国際的イベントに幾度も参戦しています。

主だったイベントとしては、2002年のダカール・ラリーに3.5リッターV6エンジン搭載仕様の改造車がクロカン4WDのテラノなどとともに出場。

2004年にモロッコで開催されたAMVシャムロックラリーでは総合優勝を果たし、そのオフロード性能をアピールしました。

各代の派生車種

エクストレイルFCV(初代)

2018年現在はEV(電気自動車)やシリーズ式HVのe-POWER(発電用エンジンの電力で走るEVの一種)など、モーター・ドライブの車のイメージが強い日産ですが、そのエネルギー源はバッテリーや発電用エンジンばかりとは限りません。

トヨタなどと同様、水素などから電力を取り出す燃料電池でモーターを動かすFCV(燃料電池車)の開発も盛んで、2003年12月にはエクストレイルFCVの官公庁・法人向けリース販売を開始しました。

エクストレイルFCVは2007年に日本初のFCVハイヤーとして納入されたり、ニュルブルクリンク・サーキット北コースで2008年当時のFCV最速タイムを記録するなど、積極的に実用性や走行性能をアピールしています。

デュアリス(2代目)

欧州向けコンパクトハッチバック車、アルメーラの欧州仕様が廃止されたのを受けて、実質的な後継として2代目エクストレイルのショート&都会派SUV版キャシュカイを開発、それを日本でも発売したのがデュアリスです。

あくまで最低地上高の高い都会派SUVとして開発されたため、シティオフローダーのエクストレイルとは競合しないものとされ、また欧州市場主体のためサスペンションに日本車で初めてザックス製ショックアブソーバーを採用、舗装路での走行性能には定評があります。

本来コンパクトカーとして販売するため全長は2代目T31型エクストレイルより短く、欧州ではボディを延長した3列シート版キャシュカイ+2があり、日本未発売だったものの、その後継車は3代目T32型エクストレイル3列シート仕様として日本でも発売されました。

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