制限行為能力者がカードローンでお金を借りてギャンブルに使ってしまったら

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制限行為能力者がカードローンでお金を借りてギャンブルに使ってしまったら

目次

意思能力・行為能力

まず、民法に規定されいている意思能力・行為能力から説明します。意思能力とは、自己の行為の結果を弁識するに足りる精神的な能力(7~10歳程度)をいいます。そして、意思能力を欠く者のした法律行為は無効です。

民法

(意思能力)
第3条の2

法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

次に、行為能力とは、単独で確定的に有効な意思表示をなし得る能力をいいます。制限行為能力者は、このような行為能力を制限されている者を指します。具体的には以下の4つの類型があります。つまり被保佐人とは、制限行為能力者の1つの類型です。

①未成年者(5条)
②成年被後見人(7条)
③被保佐人(11条)
④被補助人(15条1項)

未成年者

未成年者の定義は、18歳未満の者(4条)です。

民法

(成年)
第4条

年齢18歳をもって、青年とする。

2022年4月1日から民法上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。 成人になる(成年に達する)と、保護者の同意なしに契約などができるようになり、これまで未成年者取消権が認められていた18歳、19歳の方は、未成年者取消権が認められなくなります。因みに、大手カードローンの年齢制限は以下の通りです。

プロミス(18歳以上~74歳)
https://faq.promise.co.jp/FAQ_006

SMBCモビット(20歳以上~74歳)
https://faq.mobit.ne.jp/app/answers/detail/a_id/1028/related/1

アコム(20歳以上~上限なし)
https://www.acom.co.jp/faq/29/

アイフル(20歳以上~69歳)
https://www.aiful.co.jp/faq/borrow/detail206/

バンクイック(20歳以上~65歳未満)
https://www.bk.mufg.jp/kariru/banquic/faq.html

みずほ銀行カードローン(20歳以上~66歳未満)
https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/card/

三井住友銀行カードローン(20歳以上~69歳以下)
https://www.smbc.co.jp/kojin/cardloan/

レイク(20歳以上~70歳)
https://lakealsa.com/faq/faq_detail.html?id=213

未成年者
単独でできない行為保護者(法定代理人)の同意がなければ、すべて単独ではできない。

例外
①単に権利を得る行為
②義務を免れる行為
③法定代理人が目的を定めて処分を許した財産をその目的の範囲内で処分し、あるいは、目的を定めないで処分を許した財産を処分する法律行為
④一定の身分行為(認知、遺言※、氏の変更)
※15歳未満は無効
単独でやったら?取消せる。取消すまでは有効。
誰が取り消せるか未成年者本人、法定代理人。取消は制限能力者一人でできる。
保護者法定代理人(一時的には親権者、親権者がいないときは未成年後見人)。
保護者の権限同意権 〇  代理権 〇  取消権 〇  追認権 〇

成年被後見人

成年被後見人の定義は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」で、条文上規定された一定の請求権者の請求により、家庭裁判所が後見開始の審判をした者(7条)です。

民法

(後見開始の審判)
第7条

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

成年被後見人
単独でできない行為単独では何もできない。

例外
①日用品の購入(コンビニで数百円程度、スーパーで数千円程度)
②婚姻、認知、遺言(医師2人以上の立会いが必要)
単独でやったら?取消せる。取消すまでは有効。
誰が取り消せるか成年被後見人、成年被後見人。取消は制限能力者一人でできる。
保護者成年後見人。
保護者の権限同意権 ✕  代理権 〇  取消権 〇  追認権 〇

被保佐人

被保佐人の定義は「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」で、条文に規定された一定の請求権者の請求により家庭裁判所が補佐開始の審判をした者(11条)です。

民法

(保佐開始の審判)
第11条

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。

被保佐人
単独でできない行為保佐人の同意がなくても、すべて単独でできる。

例外:保護者(保佐人)の同意がなければ取消可能。
①借金をしたり、他人の保証人になること
②相続を承認したり、他人の保証人になること
③不動産の取引
④重要な動産の取引
⑤5年を超える宅地の賃貸借
⑥3年を超える建物の賃貸借
⑦建物の新築・改築・増築・大修繕を頼むことなど
単独でやったら?取消せる。取消すまでは有効。
誰が取り消せるか被保佐人本人、保佐人。取消は制限能力者一人でできる。
保護者保佐人。
保護者の権限同意権 〇  代理権 ✕  取消権 〇  追認権 〇

被補助人

被補助人の定義は「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」で、条文上規定された一定の請求権者の請求により、家庭裁判所が補助開始の審判をした者(15条)です。

民法

(補助開始の審判)
第15条

① 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
② 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
③ 補助開始の審判は、第17条第1項の審判又は第876条の9第1項の審判とともにしなければならない。

被補助人
単独でできない行為民法13条1項各号列挙の行為。
①元本を領収し、又は利用すること。
②借財又は保証をすること。
③不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
④訴訟行為をすること。
⑤贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
⑥相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
⑦贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
⑧新築、改築、増築又は大修繕をすること。
⑨第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
⑩前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
単独でやったら?取消せる。取消すまでは有効。
誰が取消せるか被補助人本人、補助人。取消は制限能力者一人でできる。
保護者補助人。
保護者の権限同意権 ✕※  代理権 ✕※  取消権 ✕※  追認権 ✕※
※同意権付与の審判、代理権付与の審判がなされたら〇

制限行為能力者がカードローンでお金を借りた場合

上記に当てはめてみると、制限行為能力者が保護者に無断でカードローンからお金を借りた場合、カードローン契約は本人が一人で取消せます。契約が取消されると、最初から契約がなかったことになるため、借りたお金は全額カードローン会社に返さないといけないとも思えます。

その通りなのですが、民法では取消しの場合の返還については「現に利益を受ける範囲」で返還すればOKとされています(民法121条但し書き)。

民法

(取消しの効果)
第121条
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。 ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

そしてここからが「はぁ?」と思って納得できないのですが、そのお金をパチンコや競艇などのギャンブルで消費してしまった場合は返還義務がないとされます。一方で、生活費で使った場合は返済義務があると判断されます。これは、「ギャンブルで使ったら仕方ないよね。生活費に使った場合は、生活費に充てるはずだったお金はまだ残っているはずなので、それを返しなさい」と判断されます。

しかし、制限行為能力者が親の同意書をねつ造したり、印鑑を勝手に持ち出したり、契約の相手を信じさせるために嘘を付くと「詐術」とみなし、詐術を使って契約した場合にまで取消権を認める必要はないといえるので、契約を取消せなくなります。

民法

(制限行為能力者の詐術)
第21条

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

まとめ

制限行為能力者には4類型あり、どの類型でもカードローンでお金を借りる行為は、保護者が取消せるうえ、本人が一人でも取消せます。取消すと、ギャンブルに使った場合、お金が残っていなければ返還しなくてもいいのですが、生活費に使った場合は全額返還しなければなりません。

一方、詐術を使って相手を騙した場合には取消しができません。もし、カードローン会社とこの点で争訟となった場合、カードローン会社は「詐術を使われた」と主張して徹底抗戦してくるはずなので、上記スキームを悪用してお金を返さなくてもいいようにできるとは思わない方が身の為です。

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